役員責任の動向

役員責任を取り巻く環境の変化

現在、会社役員はいつ提訴されてもおかしくない環境にあります。

最大のターニングポイントは1993年の商法改正の訴訟提起の手数料の一律低額化です。
一般的な訴訟は訴額に応じて手数料が高額化しますが、株主代表訴訟については低額となり、訴訟を起こしやすくなりました。
企業のグローバル化の進展、競争法強化を背景とした課徴金の高額化、高額な損害賠償判決事案など役員責任を取り巻く責任・リスクは年々増加している傾向にあります。

ポイント1株主代表訴訟の件数は、年々増加しています!

●地方裁判所における株主代表訴訟の件数

1993年の商法改正で急増した株主代表訴訟件数は、司法判断の基準が一定程度明らかになったことで2000年以降いったん沈静化。
しかし、2007年以降は、企業の倫理姿勢・適切なコーポレートガバナンスを重視する社会風潮や、投資家の権利意識の高まり等によって再び増加に転じています。

ポイント2損害賠償責任額の高額化。100億円超の巨額な訴訟も。

●日本の株主代表訴訟の損害賠償請求額別分類

2006年以降に提起された株主代表訴訟(※)の損害賠償請求額別件数を見ると、2億円以下の請求が最も多いですが、100億円超の巨額な請求がなされている訴訟も一定数あります。 (※)資料版商事法務(2014年3月号)P58~P62に掲載された2006年から2014年までに提訴された訴訟50件(金額不明の3件を除く)を対象。

●訴因と争訟結果

訴因
経営判断の誤りを問う事例と違法行為に絡んだ事例が約半数ずつ。
訴因 件数(割合)
経営判断の誤りを問う事例 22(44%)
違法行為に
絡んだ事例
カルテル・談合 14(28%)
不正経理 4(8%)
贈賄・違法献金 2(4%)
社員のインサイダー取引 1(2%)
その他 4(8%)
不明 3(6%)
合計 50(100%)
出典:リスクマネジメント最前線 2014 No17(資料版/商事法務(2014年3月号)より東京海上日動リスクコンサルティング作成)
争訟結果
経営判断の誤りを問う事例では会社役員の責任が認められていないものの、違法行為に絡んだ事例では、1件を除き、会社役員が何らかの賠償金を負担。
  争訟結果 合計
会社役員が賠償金負担 会社役員勝訴、取下げ
経営判断の誤りを問う事例 0 10 10
違法行為に絡んだ事例 14 1 15
合計 14 11 25
出典:リスクマネジメント最前線 2014 No17(資料版/商事法務(2014年3月号)より東京海上日動リスクコンサルティング作成)

ポイント3課徴金の増加・高額化

行政からの「課徴金」や「罰金」の支払いに絡む株主代表訴訟が増えています。原告である株主は課徴金や罰金の支払いをすること自体が会社の損害だと主張し、その補てんを違法行為を抑止できなかった会社役員に求めます。

課徴金等の行政処分を受けたことについての株主代表訴訟は、損害が明確であり、会社役員の抗弁が容易でないケースが多くなっています。また課徴金減免制度の活用も株主代表訴訟の論点として重要度を増しています。

課徴金等は日本の法令だけに留まらず、米国や欧州等の他国の取締りにおける巨額の課徴金・罰金事例が多くなっています。米国の海外腐敗行為防止法(FCPA:Foreign Corrupt Practices Act)に代表される各国の外国公務員贈賄規制法による取締りも強化されており、世界中の著名な大企業が巨額の課徴金を徴収される例が後を絶ちません。

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