例)カルテルによる課徴金命令
被告 取締役17名
請求額 67億6,272万円
概要 A社が通信会社が発注する製品の販売に関してカルテルを結んでいた疑いで立ち入り検査を受け、独禁法違反として67億6272万円の課徴金納付命令を受けた事例。
提訴理由 カルテルの防止義務を怠り課徴金減免制度を利用せず会社に損害を与えたとして当時の取締役17名を提訴。
ポイント カルテルの関与・黙認した過失・内部統制システム・コンプライアンスシステムの構築義務違反・課徴金減免制度の不活用などの、問題発覚後の対応に至るまで、取締役らの一連の責任が問われた。
例)談合
被告 取締役15名
請求額 12億8,190万円
概要 B社は20年間にわたり、8件以上の工事の受注に関して談合を行っていた。これにより、公正取引委員会等より、課徴金の納付命令や排除措置命令を受けた事例。
提訴理由 談合行為によって、課徴金の納付だけではなく、工事の入札停止や会社の信用失墜など多大な損害をB社が被ったとして、談合行為への関与の有無を問わず、取締役15名を被告とする株主代表訴訟が提起。
ポイント 談合防止体制の構築義務違反について、関与の有無を問わず取締役の責任が認められるかどうかが争われた。
例)資産運用の失敗
被告 現・元取締役48名
請求額 533億2,046万円
概要 F社(乳酸菌飲料等の製造販売を主たる業とする株式会社)は資金運用業務の担当取締役の指示のもと、投機性の高いデリバティブ取引を行い、会社に約533億2,046万円の損失を被らせた。これについてF社株主が、担当取締役らに対し損害賠償を求めた事例。
提訴理由 (1)法令違反の有無
(2)定款違反の有無
(3)デリバティブ担当取締役の善管注意義務
(4)他の取締役の善管注意義務
等を争点として株主代表訴訟が提起。
ポイント 会社の余裕資金を運用したことが取締役の判断に許容された裁量の範囲を超えた善管注意義務違反があったかという点が争われた。
例)子会社株式の高値買取
被告 取締役3名
請求額 1億3,000万円
概要 I社は、グループ会社を完全子会社化するため、グループ会社の株主から、1株あたり5万円、総額1億5,800万円で株式を買い取り。監査法人等による当時の株式評価額は1株あたり1万円程度だったものの、株主からの反発を避けるため、出資価格である5万円での買取を決定したもの。
提訴理由 より評価額に近い価格での買い取りを検討せず、不当に高額な買取価格を設定したことは、取締役としての任務懈怠にあたるとして、株主代表訴訟が提起。
ポイント 子会社の株式買取の際の価格設定について、取締役にはどのような要素を考慮すべき義務があるか、という点が争われた。
例)食品産地偽装
被告 取締役・監査役13名
請求額 300億500万円
概要 BSE問題を背景に行われた国産牛肉の買上げ措置で、E社従業員は、買上げの対象外である輸入牛肉を国産牛肉と偽装して買い上げさせた。この事件により、E社の社会的信用は著しく失墜し、事実上の営業不能に陥り、解散する事態となった事例。
提訴理由 取締役らに、産地偽装防止の措置をとっていなかったことに対する善管注意義務および適切な内部統制システムの構築義務の違反があったとして、偽装工作に実質的に関与した取締役とそれ以外の取締役に対し、株主代表訴訟が提起された。
ポイント 偽装工作に実質的に関与していなかった取締役について、法令違反を察知しえたかどうか、他の取締役の監視義務違反があったか、法令違反を防止するシステムを構築する義務の違反があったかという点から、広く取締役の責任について争われた。
例)従業員の過労死
被告 取締役4名
請求額 8,000万円
概要 M社の従業員が、恒常的な長時間労働を原因として、急性心不全により死亡。
提訴理由 取締役には、従業員の労働時間を適正に把握しうる社内体制を構築し、時間外労働についても適正な範囲内におさめ、また給与体系についても長時間労働が生じないよう配慮する善管注意義務があったにもかかわらず、これを怠ったと主張して、死亡した従業員の両親が第三者訴訟を提起。
ポイント 従業員の労働状況については、現場の管理者に責任が発生するのが一般的である一方で、会社全体の管理体制について、取締役の責任が認められるかどうかが争われた。